第117回歯科医師国家試験は,令和6年1月27日および28日に,令和5年版歯科医師国家試験出題基準(ガイドライン)に基づいて,オミクロン変異株の流行の中で開催された。
第117回の合格基準は,一般問題(必修問題を含む)を1問1点,臨床実地問題を1問3点とし,
① 領域A(総論) | 60点以上/94点 |
② 領域B(各論) | 254点以上/379点 |
③ 必修問題 | 64点以上/80点 |
とした。
今年度第117回歯科医師国家試験の結果は,次の通りである。
| 出願者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
新卒者 | 2,358人 | 1,962人 | 1,600人 | 81.5% |
全 体 | 3,568人 | 3,117人 | 2,060人 | 66.1% |
昨年第116回の63.5%に続き,今年の66.1%も決してよい成績ではないが,歯科医師過剰の現況から考えて,合格率の低下は今後も続くものと推測される。
歯科医師国家試験出題基準は原則4年に一度改定され,第117回国試は令和5年版出題基準が採用されてから2年目のものであった。
少子高齢化に伴い,今後も医療や介護の需要が見込まれ,地域包括システムの構築が求められるとともに歯科医師に対するニーズも大きく変化するであろう。厚生労働省の考えによると予想される変更点は,
①高齢化等による疾病構造の変化に伴う歯科医療の変化に関する問題
②地域包括ケアシステムの推進や多業種連携に関する問題
③口腔機能の向上や摂食機能障害への歯科医療への歯科診療に関する問題
④医療安全やショック時の対応に関する問題
⑤職業倫理に関する問題
以上のような問題が必修問題の中に含まれて出題されることが考えられる。
歯学教育スクールの過去のデータによれば講義の出席率が80%の人は,83%の合格をしていると言われている。“やる気” さえ出せれば,きっと合格する。しかもその “やる気” を一年間持続させることが大切である。
いずれにしても,毎回申しているように,「孫子語録」にあるように「戦をする」にはまず敵の実情を知り,自分の力を知って行えば,必ず勝つということである。
『ANSWER』の過去の問題で敵の実情を知り,勉強した成果を模擬試験で己を知れば,この戦は必ず勝つと信じて欲しい。
この本を十分に活用され国家試験を一人でも多くの人が合格できることとコロナ禍の一日も早い終息を祈念する。
2024年4月
東京医科歯科大学 名誉教授
DES歯学教育スクール 理事長
田上 順次