テコム 出版事業部
理工学関連書籍のご案内
化学
  [シリーズの説明を見る]
Q&Aで理解する実験室の安全[生物編]

実験で遭遇するトラブルや注意事項,失敗例,事故例等を79のQ&A形式で解説!

Q&Aで理解する実験室の安全[生物編]

品切れ
野村港二(筑波大学教授) 著
[みみずく舎:発行]
A5判,176頁,1色刷
2012/06/25発行
¥2,420(本体¥2,200+税¥220)
ISBN 978-4-86399-151-4
生物実験を行う際、遭遇すると思われる実験上のトラブルや注意事項などを79のQuestionと適確なAnswerを見開きページに纏め、一読で実験事故から解放!されるようつとめた。
実験事故への予防、対策、そして起こったとき、など実験者の立場になって「その時どうするか」を解説。
過去に実際起こった失敗例・問題例・事故例などをできるだけ記載。
各Questionごとに、一目でテーマが分かるイラストを明示。

 組換えDNA 実験に代表される現代の生物実験が致命的な大事故を起こしてこなかったのは,Bergらが1974年にScience誌上で訴えたモラトリアル宣言Potential Biohazard of Recombinant DNA Moleculesと,それに引き続く1975年のアシロマ会議の成果といっても過言ではない.組換えDNA技術が実現したにもかかわらず,安全性の確保が必要であることを認識した世界の研究者はBergらの意見に従って実験を一時停止し,アシロマで一堂に会して安全を確保する方法を論じた.これが現代でも我々が守っている組換えDNA実験に係わる法律の基礎となった.一般的に法律や規則を守るにも,努力が必要だが,組換えDNA実験の規則は守りやすく合理的であることに逆に驚かされる人も少なくないだろう.組換えDNAに係わる規則は仕事を円滑に進める助けにこそなれ,うっとうしい存在ではない.規則が研究者の自己規制と熟慮によって合理的につくられたからである.
 安全とは,そういう合理性から生まれるものではないだろうか.ただ規則をつくっても守られなければ意味がないどころか,二重帳簿や隠蔽という形で事故を生む温床にすらなりかねない.東日本大震災に関連する様々な出来事で,我々は今もそのような問題を抱えたまま生活している.もっとも,人の悪口をいう前に,今一度自分の足元の安全について考えてみてもよいのかもしれないとも思う.
 だいぶ前のことになるが,実験の安全についてリアリティーをもって分かりやすく書かれた『Q&Aと事故例でなっとく! 実験室の安全[化学編]』に続く[生物編]をつくりませんかという話をいただいた.ところが,いざ書き始めてみると事故や失敗例を集めるのに苦労した.幸か不幸か,生物実験では化学や物理学の実験に比べれば爆発や火災などの大きな事故は起こしにくい.しかし,発癌物質など生体に直接作用する薬品や,始めにとりあげたようにバイオハザードなど潜在的な危険性をもつものも扱う.一方,対象となる生体や細胞などがデリケートな生き物であることへの配慮も必要である.生物学実験では事故とともに,生き物や生物活性のある分子を扱うが故の失敗も問題になる.そんな失敗例まで何とか集めたのだが,結果としてほとんどが私自身が直接起こしたか,ごく近くで目にしたり聞いたりした実例である.「音声と映像は換えてあります」程度に事実をモディファイしたものもあるが,完全なフィクションはない.よくも様々な事故や失敗,あるいは問題となる例が起きるものだと,校正稿を読み返しながら改めて呆れている.
 事故や失敗の多くは,確認やコミュニケーション不足,事実の誤認や知識の欠如によることも,読み返して再認識した.そういう意味で学生諸君には「基本を勉強しなさい」「化学や物理,地学の知識がなければ生物学実験をするのは危険だ」などと教師のようなことをいいたい気持ちもある.しかし,最初に書いたとおり合理的に実験を進めれば安全が確保されるような環境を,我々側がつくる努力も必要であろう.本書が,これから実験を始める皆さんと,実験環境を整備し指導する皆さんの双方のヒントになれば幸いである.
 最後に,本書の出版にあたり,企画,編集等において多大のご尽力をいただいた,みみずく舎/医学評論社の編集部の皆様に厚く御礼を申し上げます.

  2012年5月

野村 港二  

目次
Ⅰ 実験作法のいろは
 ─実験の前に─
Q 1 実験室の特別マナーは
Q 2 実験ノートや記録のとり方は
Q 3 生物実験に必要な単位系と言語は
Q 4 実験に欠かせないシンボルマークや掲示
Q 5 実験の準備
Q 6 実験での時間の管理の方法は
Q 7 製品カタログをこんなときに使っては
 ─薬 品─
Q 8 試薬や器具は英語名も知っておく
Q 9 試薬のラベルには大切な情報があります
Q10 試薬を安全に取り扱うには
Q11 実験内容にあった試薬の選定はどのように
Q12 染色液や色素にも危険がありますか
Q13 酵素試薬の取扱いで気をつけることは
Q14 試薬を保管するときに気をつけることは
Q15 試験管やメディウム瓶のラベルの書き方は
Q16 試薬を量り取るときに気をつけることは
Q17 測容器にはどんなものがありますか
Q18 試薬を溶かすコツは
Q19 pHを測定するときの注意点は
Q20 緩衝液の選択法とつくり方のコツは
Q21 薬品の冷蔵・冷凍保存で気をつけることは
Q22 溶液を安全に保管するには
 コラム:ゴミ箱─普通の世界への通り道─

Ⅱ 生物材料と実験操作法
 ─生物材料─
Q23 生きている材料に対する心得は
Q24 人工気象器での栽培がうまくいかないのは
 ─生物材料の操作─
Q25 実験圃場での作業で気をつけることは
Q26 フィールドワークで気をつけるべき点は
Q27 生物材料の冷凍保存における留意点は
Q28 実験には緩急のアクセントが必要
Q29 材料をすりつぶすときの留意点は
Q30 組織や細胞,オルガネラ単離の留意点は
Q31 生体高分子の扱いで気をつけることは
Q32 生体分子の定量で考えるべきことは
Q33 核酸の電気泳動を安全に行うには
Q34 PCRがうまくいくコツを教えてください
Q35 酵素などの活性の基準は
Q36 タンパク質の電気泳動で気をつける点は
Q37 抗体を上手に使うコツは
 ─無菌培養─
Q38 滅菌を安全確実に行うには
Q39 オートクレーブの安全な使い方は
Q40 ろ過滅菌の留意点は
Q41 無菌培養とはどのようなもの
Q42 無菌操作を安全に行うには
 コラム:タオル─チョイ汚れの必須アイテム─

Ⅲ 実験器具・装置と操作法
 ─器具と操作─
Q43 必ず実験器具を点検しよう
Q44 実験台で守るべきマナーは
Q45 流しはこんな風に使おう
Q46 実験器具の洗浄で気をつけることは
Q47 純水の使い方は
Q48 ガラス製器具の安全な取扱いは
Q49 プラスチック製器具の安全な取扱いは
Q50 金属製器具の安全な取扱いは
Q51 実験室での「紙」アラカルト
Q52 安全な加熱って
Q53 冷却にこんな危険が
Q54 インキュベーションで気をつけることは
Q55 いろいろな振盪がありますね
Q56 撹拌と溶解操作で気をつけることは
Q57 ろ過操作で気をつけることは
Q58 濃縮や蒸発操作で気をつけることは
Q59 生物試料を乾燥させるには
Q60 沈殿や上澄みの回収と再懸濁のコツは
 ─装 置─
Q61 サンプルをリンスするときは
Q62 サンプルを運ぶときに気をつけることは
Q63 微量遠心で気をつけることは
Q64 高速遠心で気をつけることは
Q65 分光光度計で気をつけることは
Q66 写真を撮るときは
Q67 光学顕微鏡で気をつけることは
 コラム:お出かけバッグ─とっさの時に困らぬために─

Ⅳ 実験環境のいろは
 ─実験環境と安全─
Q68 蛍光顕微鏡観察で気をつけることは
Q69 顕微鏡で細胞数や組織の長さを測定するには
Q70 電子顕微鏡観察で気をつけることは
Q71 バイオハザードの取扱いは
Q72 予期せぬ事態に備えるために
Q73 電気を使うときの安全は
Q74 火事などへの対処は
Q75 実験室の地震対策は
Q76 停電への対策は
Q77 実験廃液と廃棄物を処理するには
Q78 実験排水で気をつけることは
Q79 生物体の廃棄の方法は
 コラム:傘立て─安全は便利より優先されねばならない─

TOP   

<<戻る
 065499