第104回歯科医師国家試験は合格基準変更2年目になり,ABC各領域別基準点の採用は踏襲された。
昨年と同じ試験時間(総計530分),各科がランダムに並ぶという昨年同様の形式であり,午前に一般,午後に臨床問題が配分され,直前に相当範囲を暗記する対策ができないのは同様であった。
出題形式上の変化としては,まず複択形式の出題は前年同様に多く,その比率は必修を除く一般で52.6%(103回:58.4%),臨床では42.9%(同:36.2%)を占めていた。
DES採点サービスの統計によれば,X1タイプ,X2タイプの臨床問題の平均正答率が67.2%(103回:74.4%),67.5%(同:63.0%)であるのに対して,XXタイプでは46.6%(同:53.3%)に留まっており,相変わらず難問化の鍵を握っていると言える。
一方,問題内容に関しては,必修問題(A,C問題の最初の各35問のX1形式と推定)の大量採点除外(正確には正解者は採用,不正解者は採点対象から除外)が話題になった前年の14問に比べて,今年度はそれが一気に6問に減り,必修での『繰り上げ当選者』の数は大幅に減少したと思われる。
DES採点サービスにおける必修難問上位と採点除外問題は1問を除き完全に一致しており,正答率約50%未満の問題がピックアップされたと推測される。このことは前年同様に,厚労省国試データベースとの傾向一致と信頼性が読み取れる結果となった。今年度も引き続きこのDES採点サービスでの正答率をAnswerシリーズの各問題に併記する形式としたので,学習進度を計る指標として役立てて頂きたい。
我々の推計によれば,A領域の正答率ボーダー(このレベル以下の全問を正答すればパスする)は71.5%(103回:67.7%),B領域で68.8%(同:69.7%),C領域で64.9%(同:73.2%)となった。これはA領域である基礎分野および臨床総論,衛生分野のボーダーを下げ,C領域に含まれる口腔外科,補綴,麻酔分野のボーダーを大幅に上げて,この分野でより難問まで正答できる者を選別する意思を読み取ることができる。
問題内容では,臨床問題は実習レベルを越え,上級医でも悩ましいケースや学会発表相当に近いような臨床的事項を問題とする出題が目につくようになっており,一方で明らかにキーワードの削除が行われたと疑わせる問題も増えており,実質的に解答対象になる問題数は365問ないことにも注意が必要である。
見学のみで臨床の実体験を経ない教育をされて,肝心の国試では臨床の現場での考え方や感覚,高度な治療オプションの基礎知識が試されるという,受験者には酷な状況はますます深まっている。
歯学生の皆さんは,大学での講義と実習を核として,本書と併せて出版されているKEY WORDSシリーズを基に歯科医学の総まとめを行い,特にTaxonomyⅢ型の概念である問題解釈・解決型のトレーニングを積んで,臨床的難問を突破し見事,国試に合格し歯科医師としてのスタートを切っていただきたい。
この本が十二分に活用され,皆さんの合格に少しでも貢献できることを願ってやまない。
2011年6月 著者代表