深くしっかりした学習を
●十分な演習量を
国家試験対策として,過去30年にわたる国家試験問題と,主要大学の卒業試験の問題を検討して,講義に活用しています。すると,国家試験,卒業試験ともに問題の質が上がってきている点が,手にとるように実感されます。「知っているかどうか」の問題から,「病態生理の深い理解や臨床現場の問題点を問いかける」問題へ。これが最近の傾向です。
「もっと,すっきりさせて」というご要望はあるかと思いますが,長年の国家試験対策での経験から「すべての出題ポイントについての十分な演習を行う」ことが合格への道であることは,確信をもって言えます。この点を理解し,積極的に演習を繰り返していただければと思います。
●深い解説
本書では,専門の先生方にお忙しいところ全面的に協力していただき,専門の立場から,臨床力を磨くための解説を執筆していただいています。旧アプローチでは,「解説が長い,まどろっこしい」とのご批判を受けましたので,それを参考に大きく手を加えました。その結果残ったのが,この本の解説です。このレベルが,どうしても理解していただきたい内容と考えてください。
●一般と臨床は同時にやりましょう
様々な方と一緒に勉強をしていると,苦戦するパターンがおのずと浮き上がってきます。そのひとつが,一般は一般,臨床は臨床と,別個に学習する場合です。直前に成績が伸び悩み,苦戦することになります。
考えてみれば,「一般問題」,「臨床問題」というのは,あくまでも出題の形式であって,学習するうえでは,両者を統合した方がより深い理解を得られるわけです。そこで,本書では,一般問題と臨床問題を統合して,問題のテーマごとに配列しました。各項の冒頭に「レジュメ」を掲載してありますので,この内容を理解したかどうかを確認しながら,演習を繰り返してください。
●臨床的なストーリーを刷り込みましょう
本書では,疾患ごとに問題が収載されていますので,臨床問題では「診断がすぐついてしまう」というご批判もあるかと思います。しかし,CBTを経験されると,診断が分からないことはほとんどないはずです。学習するうえで大切なことは,診断の当てっこではなく,「ある疾患ではどのような訴えで来院し,どのような診察,検査,治療の流れになるのか」という流れ,あるいは臨床ストーリー(受験的にはパターンというのでしょうか)を考えることです。臨床経験を積むとは,この流れを体に刷り込むことにほかなりません。演習を通して臨床的なストーリーを覚えていきましょう。
●背景にある病態生理を理解するための問題配列
もうひとつの苦戦パターンは,問題の答えは覚えたものの,問題の背景に踏み込んだ勉強ができない場合です。「同じ問題ならできるんだけど,応用がきかなくて」という場合は,まずこれが原因です。
私の講義では問題の解説はしません。問題を使って病態生理の世界を説明していきます。ですから,みなさんが学習する場合も,問題の背景を意識していただきたいと思います。背景にある病態生理の世界が浮かび上がってくるために最適となるような,問題の配列になっています。
2009年2月
東京医科大学 卒後臨床研修センター 三苫 博
▲TOP