介護福祉士になるため
*1には,厚生労働大臣の指定する養成学校を卒業する方法と3年以上介護等の業務に従事し介護福祉士国家試験に合格して資格を取得する道があります。年1回実施される国家試験を受験する場合は,筆記試験だけでなく実技試験も受験しなければなりません。
*2実技試験では,基本的な「日常生活の介護・指導」に関する実践力が評価されることになります。
ところで,「日常生活(移動・移送・食事・排泄など)」に関する出題というと日頃何気なく行っていることも多く,ともすると簡単にできるように錯覚されがちですが,身体上または精神上の障がいがある人に対し,専門的知識に基づいてその人の心身の健康状況・自立状況を踏まえ,その人に合うように安全・安楽に行い満足感を得ることは,実は簡単なことではありません。それなりの努力・準備が必要です。
この本は,そのような学習に役立てられるために作成しました。内容は,「基本技術編」と介護福祉士国家試験の「実技試験・模範解答例とポイント」から構成されています。技術の手順を示すページでは根拠や留意点を添え,わかりやすいように写真,イラストを加え,さらにDVDで具体的な手順例を説明していますので,学校教材として,また独学する場合にも理解を助けてくれるものと思います。今回,第3版の改訂で,出題基準をふまえて一部内容を追加し,DVDにも実技試験の模範回答を追加しました。技術は,頭で考えるだけでは身に付きにくいものです。この本を技術練習に活用してみてください。練習ではまず丁寧な技術を意識して繰り返し,その後,効率性・迅速性を身につけていきましょう。また,自己の技術を振り返り,失敗をその後の成功に導く努力と前向きさも力を伸ばしてくれるものです。その姿勢を大切にしてください。また,介護は人相手の職業であり,コミュニケーションが重視されますので,必要最小限度の言葉がけの例も載せました。参考にしてみてください。
なお,受験に当たっては,過去問を一覧表で確認できるページを用意してありますので,その表で出題傾向をつかみ,過去問すべてを実際に手順に沿って実施してみてください。基本的に求められる大切なポイントが見えてくるはずです。練習するほど受験に対する不安も緩和されるでしょう。
国家試験合格は,介護の質を保証するための一つの重要な通過点です。この本は,介護福祉士をめざす方が,自分の仲間や関連職種の人々と協働しながら,自分のめざす介護を専門家として行えるために国家試験に合格していただく目的で執筆しています。合格した方々が将来的にも介護の質の維持・向上に向けて,実践経験を積み,後輩の教育に貢献され,介護を受ける方々に満足を与えられる人として活躍されることを願っています。
また,本書の内容は,介護福祉士の方だけでなく,自宅で介護を行っている方や,看護学生,看護師,看護教員の方にも大いに活用していただける内容です。多くの方々にお役に立てれば幸いです。
最後になりましたが,本書出版に当たりまして,編集でお世話になりました医学評論社のスタッフの皆様,DVD撮影で協力いただいた制作スタッフの皆様と卒業生,在学生に深く感謝致します。
2013年12月21日
東京医科大学看護専門学校
教務主任 石塚睦子
*1 本書226,227頁の「介護福祉士国家試験のあらまし」を参照。
*2 平成17年度より介護技術講習制度を導入し,実技試験もしくは介護技術講習のいずれかを選択する。
基本技術編
体位変換(ベッドの片側寄せ,仰臥位から側臥位,仰臥位から座位,仰臥位から端座位)
環境整備(シーツ交換)
移乗と移動(杖歩行,ベッドと車いす間の移乗,ベッドと椅子間の移乗)
衣服の交換(トレーナーの着脱,パジャマの交換,ゆかた式寝巻の交換)
排泄の介助(ポータブルトイレの介助)
実技試験編
第24回国家試験(衣服の介助と車いすの移乗移送)
第23回国家試験(杖歩行と趣味の活動の準備)
第15回国家試験(体位変換と衣服・シーツの整え)
第12回国家試験(パジャマの着用と車いす移送)
第9回国家試験(ゆかたの着用とシーツの整え)
第8回国家試験(ポータブルトイレへの移乗とシーツの整え)
第7回国家試験(車いす移送と脈拍の観察)
第5回国家試験(視覚障害の人の歩行・食事の介助)
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